映画「君の名は。」は、いい感性チェッカーですね
大ヒット上映中の「君の名は。」。
面白い、という人もいれば、あれ? そうでもないんじゃね? という人もいます。
大ヒットしている作品は色々な人の目に触れるので、賛否両論なのは仕方ありません。ただ、他の人気作品と比べると賛否の比率がわりと真っ向からわかれている感じがします。
おそらく、君の名は。、を受け入れるかどうかって、この映画の1シーンをどう思うかじゃないかな、って思うんですね。
ネタバレを避けるためにぼかして書きますが、こういうシーンがあります。
お互いにとある情報を交換してメモしあうんですよ。で、そのメモを持って別れるわけですけど、ヒロインがそのメモを少し経って落ち込んだときに偶然、見るんです。
そうしたら、励ましの言葉が書いてある、と。交換しようとした情報ではなかったと。
でも、それで女の子は元気を出して、もう一度、頑張ろうとするわけです。
そのとき、「ぐわああああああああ! 鳥肌!」って感動する人と、「いや、違うやん。約束した内容のことを書けよ。何、関係ないこと書いてんねん」とか「いや、そのメモをどうして、すぐ見てないんだよ、おかしいだろ」とツッコミが頭によぎる人、2種類いる人がいると思うんですね。
もちろん、前者が「君の名は」は傑作だ! という人たちです。逆に「きもっ!」と思う人は微妙なのでしょう。だいたい全編こんな感じのノリなので。
なので、自分がどっち側の存在なのか、自分の感性を試すにはちょうどいい作品です。
君の名は。、は全体的にシーンの盛り上げに気遣っている印象があります。とにかく盛り上がればいい! こまけーことはいいんだよっ! 的な。
なので、そこが気になる人には、うーむ、話に入り込めない。的な感じになるのではないかなー、と思うわけです。ただ、少なくとも、その演出重視の勢いにハマる人も多いわけです。
全員が納得できる凡庸な作品よりも、多少の無理があっても勢いで押し切る作品のほうが、メガヒットの可能性は高い、ということでしょうか。大事なことは「演出」です。
宮﨑駿御大は、前にテレビでこんな趣旨の発言をしていましたね。
「映画で大事なのは1シーン、1ショット。心に残る絵が、映画なんだ。ストーリーなんて気にしない」
結局、人に伝わるかどうか、刺さるかどうかなんて、感性の世界の話なんでしょうね。
そして、刺さってしまったら、多少の物語の矛盾は気にならなくなってしまう、たとえご都合主義的であっても奇跡を祈ってしまう、それが人の心なのでしょう。