おにメモ

SIerを辞めてフリーランスになったシステムエンジニアのブログ。

Make America Great Againって、アメリカは「Greatじゃない」の?

ドナルド・トランプ氏が「Make America Great Again!」と叫び、大統領戦を勝ち抜いたアメリカ。

だけど、アメリカがGreatじゃない、ってのはどういうことなんでしょうね。

世界経済のネタ帳

http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

このサイトによると、2015年時点での世界GDPランキングは

  • 1位/米国/18兆ドル
  • 2位/中国/11兆ドル
  • 3位/日本/ 4兆ドル
  • 4位/独国/ 3兆ドル

という状況で、2位以下を大きく突き放して、米国は圧倒的な1位です。

人口一人あたりのGDPとしては、どうなのか、とも考えました。中国とか13億人なので、一人あたりで考えると、それほどでもありません。

では、アメリカは?

日本の人口を1億人とすると、アメリカは3億人です。人口一人あたりのGDP高も日本より上です。

質、量ともに圧倒的な1位です。

なのに、その圧倒的な1位が「Greatに戻るぞ」っておっしゃるわけです。

日本で例えるなら、孫正義さんが「俺は金持ちもじゃない。金持ちに戻るぞ」と言っているのを聞いた気分です。孫氏に足りないのは髪であって、金ではありません。

ところで、GDPって何なの?

Wikipedia先生によると

国内総生産(こくないそうせいさん、英:Gross Domestic Product、GDP)は、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことである。

とのことです。内閣府のページにある説明には以下のように補足されていました。

“国内”のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含まない。

ようは、トヨタのアメリカ支社の売上は含まない、ということでしょうか。

それらを含めた値は“GNI(Gross National Income)=国民総所得”というそうです。そっちのほうが、正しい値を表しているような気もしますが、

以前は日本の景気を測る指標として、主としてGNP(GNIの昔の呼称)が用いられていたが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されている。

GNIは国力を図る指標で、GDPは国民の実感に近い指標ということでしょうか。いずれにせよアメリカはどっちも1位なんですけどね。

問題は、それだけぶっちぎりに強くても、アメリカ国民が幸せを感じていない、ということです。

金はどこに消えたのか

米国に大量に富はあるわけです。しかし、多くの人は不満を感じている。

その答えは、たったひとつで、富は均等に分配されていない、ということでしょう。

最近、流行りの「格差」問題。一部のエリート層に大量に金が流れ、普通の人は貧しいまま、という。

少し前に流行ったピケティ先生が著書「21世紀の資本」で語った論ですよね。曰く「富は富を持つものの元に集まる」。

その事実があるからこそ、世界で最も富める国であるアメリカの、多くの国民たちですら「我々はGreatではない」と認識してしまっているのです。

最も経済活動が活発で、最も力強い資本主義を体現しているアメリカの行き着く先が、このようなディストピアというのは物悲しいものです。

そして、持たざる国民たちが米国の未来のために選出した人物が、資本主義勝ち組の権化のような、経営者トランプというのは、実に皮肉がきいています。

アメリカは幸せになれるのか?

意外とまともではないか? という楽観論が膨らみ始めているトランプ大統領。彼の豪腕によってアメリカ国民は「Great」と感じられるのでしょうか?

そんなに簡単ではないでしょう。

トランプ氏の論に従うなら、アメリカは世界の警察をやめ、内向きの自国優先政策をとるとのことです。ひょっとすると、今以上にGDPを続伸させ、より強大な国になるかもしれません。

しかし問題は、新しく稼ぎ出された富が、今回トランプを信任した普通のアメリカ人に分配される保証がないことです。

結局のところ、ピケティ先生の看破した富の不平等分配のフロー、資本主義の不健全な末期症状をなんとかしない限り、富は常に富裕層に流れるだけで、一般人には何の恩恵も与えないからです。

なので、アメリカ人はきっとGreatを感じることはできないでしょう。

そして、それは日本人も同じです。

日本はまだアメリカほどではありませんが、格差という単語がよく目につく時代になりました。この格差、という言葉はきっと、少しずつ重みと悲惨さを増していき、やがて日本の10年後、20年後の姿が今のアメリカの姿と重なる日が訪れます。

果たして、そのときの日本人は、どんな未来を望むのでしょうね。

トランプの一挙手一投足に注目が集まっていますが、それよりも世界最大の国に住むアメリカ人たちが「俺達はGreatじゃない」と言っている現実こそ重く受け止め、深く考えるべきではないでしょうか。