築地移転問題と五輪問題と小池百合子さんという人
小池百合子さんが都知事になってもう一年。
まるで戦勝国が敗戦国の行いを悪と裁くが如く、彼女が最初におこなったのは、過去の知事たちがくだした決定の検証です。
それは以下の二つとなります。
- 五輪会場と費用問題
- 築地移転問題
もう就任してから一年というわけで、小池百合子さんにまつわる話の雑感を書いておきたいと思います。
小池百合子さんという人
まず小池百合子さんは「人気取り」を重視する人です。選挙で勝てるかどうか、自分の知名度が上がるか、それを非常に気にします。
その精神は「政界渡り鳥」の行動に現れていて、Wikipediaによるとその華麗な足取りは
「(日本新党→)(新進党→)(自由党→)(保守党→)(保守クラブ→)(自由民主党(細田派→無派閥)→)都民ファーストの会」
となっております。
どうして都知事選に出てきたかというと、そのミーハーな行動力がたたって、安倍首相の絶対許さないリストに入ってしまったからです。
もともと同じ小泉チルドレンとして、小池百合子さんは第一次安倍内閣ではそれなりに重用されていました。なのですが、安倍さんが第二次安倍内閣に向けて、総裁選に立候補したとき、恩のある安倍さんを裏切って勝てそうな別の候補を応援したんですね。
ご存知の通り、安倍さんはお友達に甘い。裏を返せば、裏切った人間には厳しい。
結果として、安倍さんは勝利して安倍首相になり、長期政権を築きます。絶対許さないリストに入ってしまった小池百合子さんは、政治家としては積んでしまった状態になります。
そこで降ってわいたのが、本命なき都知事選。
「わたしにはこの道しかない」と小池百合子さんは言って立候補しましたが、それは政治家として輝ける最後の席、という意味であって、別に都民に奉仕したいという気持ちではありません。
そして、小池百合子さんは立候補し、相手候補のオウンゴール連発も味方して、当選を果たしたわけです。
小池百合子さんが当選後にしたこと
小池百合子さんが当選後に取り組んだテーマは大きく2つです。
- 五輪会場コスト問題
- 築地移転問題
このあたり、チョイスが秀逸だなと思うわけです。
人気取り(ポピュリズム)を重視する小池百合子さんらしいというか。実に大衆受けしそうな、インパクトが大きい知名度の高い案件ですから。
基本的に小池百合子さんの行動を紐解く場合「人気取り」「目立つこと」を念頭に紐解くと、非常にわかりやすくなります。
五輪コスト問題
どちらかというと小池百合子さんに対して批判的な論調で書いている記事ですが、五輪コスト問題については良い対応だったと感じています。
多額の調査費用と多くの人の労働力を使って当初案に戻っただけなので無駄だったと評価されがちですが、個人的にはそう思いません。
というのも、あそこで釘を差しておかないと、五輪費用はもりもりといまだに増大していたのは間違いありません。
非難の声をあげたからこそ、そこで予算の天井ができたわけです。
あれはまさに百合子グッジョブ、ポピュリズムも悪くないと思える結果でした。
築地移転問題
一方、築地移転問題の検証はもうぐだぐだだよなー、なんでこれやっちゃったんだろう的な感じです。
なんていうか「軽くこづいてやろうと腕を振り上げたら、振り下ろす先が全然見つからなくてどうしよう」状態になっちゃいましたね。
そもそも築地移転問題はいじるべきではなかったのです。
すでに予算の投入も終わっていて(つまり税金の節約という最も都民にとって意味のある部分での貢献が見込めない)、ハコはできていて、移転は事実上決定していて秒読み段階でした。
さらに重要なのは、ほとんどの都民は移転問題をたいして重視していなかったことです。
なのに、小池百合子さんは築地の知名度と無理やり移転させられるかわいそうな人を気にするあてくし素敵アピールを考えたのか、掘り返してしまいました。
結果、築地移転延長の保証費として、いくらでしたっけ? 毎日毎日、多額の税金を垂れ流す、という税金の無駄遣いが始まります。
おそらく、小池百合子さんとしても、あ、これ、あかんやつや、と思ったのではないでしょうか。
とりあえず安全検査して、結果が悪くなければ安全宣言して終わらせる道もありました。わたしが安全検査を徹底したからこそ、都民の皆様は食の安心を担保できたわけであります、とドヤ顔で報告できたわけです。
でも、検査をする度に、謎の地下空間(笑)やら地下水から劇毒物質のシアンやらが検出され、安全宣言できない状態に追い込まれていきます。
まさに振り上げた拳を振り下ろせない状態。
築地移転問題。たどり着いた結論
で、結局、たどりついた結論が
- 豊洲に一時的に移転
- 築地の土地は一旦オリンピック用の道路に変更
- オリンピック後に築地は食と市場のテーマパークとして再生
- 豊洲は物流拠点として再利用
という、もう全部のせや! という感じのやけっぱちな内容です。
そもそも豊洲に移転した後また築地に戻ってくるとかどうなんだとか、ていうかそもそも結局豊洲は安全なのかよとか、テーマパーク(笑)の建造に税金いくら掛かるんだよそんなの作るくらいなら保育園作れよ東京氏ね的な展開です。
とりあえずすべて混ぜてしまって、テーマパークとか言っておいたら、みんな納得するやろ! みたいな感じです。テーマパークという耳障りのいい汎用単語を使ってお茶を濁す辺りが、小池百合子さんの人気取り処世術の洗練された技を垣間見せてくれます。
現実的なアイディアかどうかはさておき、問題はお金です。
無駄な税金が今までも投入され、さらにテーマパーク建築にこれからも多額の税金が投入されます。いくら日本一豊かな財政の東京都とはいえ、この出費は無視できません。
これだけひっくり返した以上、普通に移転してくれとはもう言えないわけで、こぶしの振り下ろし先を無理やり作るためだけに税金が投入されると思うと憂鬱ですね。
いい加減、都民は怒ってもいいレベル。
夏の都議選はどうなるのか?
さすがに小池百合子それねーよ感のある決定ですが、東京都も国と同じ問題を抱えていて「リーダーにお灸をすえたくても、浮気する先がない」状態です。
対抗馬の東京都・自民党はちょっと悪いイメージがつきすぎていて、投票先としては微妙感がありますね。
ただ、都民ファーストの会も元民進党の人たちが選挙のためだけに転職している状態だったりするので、微妙な代物になりつつあります。
これまた都知事選と同じく、微妙vs微妙という、なんとも言えない戦いになりそうです。
元民進党に乗っ取られた、というと維新の会もそうですね(今は分裂して解毒されましたが)。
なんだか都民ファーストも維新の会と同じ道を短時間で爆走している感じがするので、同じ悲惨な結末にはならないよう、舵取りしていってもらいたいものです。